音になったのは、言葉にならなかった時間。
バブルが崩壊し、夢を描ける余白なんてほとんど残っていなかった時代。
就職氷河期、不安定な働き方――目の前にあるのは「日々の暮らし」のことばかりで、
何かを始めることや、自分らしさを語ることは、とても贅沢に思える日々。
el:cidのこれまでの作品にも、あの時代に抱えていた焦りや孤独、
言葉にならない閉塞感が、無意識のうちに染み込んでいた。
『ReGenesis』には、明確な「転換点」がある。
過去を否定するのではなく、肯定し、見つめ直す。
そんな静かな変化を刻んだ。
「blue sky blue (blue ocean mix)」では、波打ち際に立ちすくむような心象風景の中に、ふと差し込む一筋の光。希望は遠くても、確かに存在している――
「depth interview (singularity mix)」は、理想の世界を夢見て、現実逃避を続けてきた先に残っていたのは、虚無しかなかった。目をそらしてきた痛みそのものを見つめ、真正面から向き合う。
「lasting chase of love (retro future mix)」は、多様な価値観が渦巻く現代社会で、自分自身を見つける旅路を描く。誰かの「正解」に迎合するのではなく、手探りでも自分だけの答えを探し続ける、そんな孤高の探求心を音にした。
「new age (war mix)」は、情報が溢れかえった時代における「個」の在り方を問いかける。大きな声に飲み込まれずに、静かでも確かな、自分の意思を持つこと。
そして「time after time (heaven mix)」。この曲には、過去を否定するのではなく、受け入れて前に進もうとする思いを込めて。
傷つき、遠回りをし、不器用にしか生きられなかったかもしれない。
それでも、今、私たちはここにいる。
その事実だけで、十分に意味がある。
『ReGenesis』は、その「今ここ」を確かな音で刻み込むためのアルバム。
このアルバムには、過去に背を向けるのではなく、
その痛みごと抱きしめながら、もう一度歩き出す――そんな意思が込められている。
誰かのためでも、時代のためでもない。
これは、”自分自身の再誕”の記録。
繰り返す日常の中で、ふと耳を澄ませたとき、
その音はきっと、あなた自身の中にも響いているはず。
『ReGenesis』――これは、あなたの物語でもある。
この作品を聴いてくださった方々の心の中に、それぞれの「再生」の物語が静かに芽生えてくれたなら、これほど嬉しいことはありません。

――el:cid / shigeta